山のめぐみ図鑑

カタクリ|片栗 カタコ

大鳥で”カタコ”と呼ばれるユリ科カタクリ。片栗粉の片栗は、元はこのカタクリ。明治の開拓以後、北海道で大量のジャガイモが作られ、代用されるまではカタクリの根を堀り、洗ってすり潰して使っていました。大鳥でも昭和初期まではカタクリの根からカタクリ粉を作っていました。

語源は万葉集で大伴家持が詠んだ歌の中で堅香子(かたかご)と呼ばれていたからという説や、片葉の葉に鹿の子模様が入っているので、片葉鹿(か)の子⇒カタカゴ⇒カタクリに転化したという説など、ハッキリしていない。

江戸後期に東北を旅した菅江真澄の記録には、カタクリに関しての記述があり、庶民にも馴染みのある山菜であったことがわかる。

十九日 例のように古城の跡で遊び、かたこの花(かたくりともいう)にまじって咲いている菫があったのを、女の童は、これは里かたこだと摘みとった。すみれ草をさとかたこばなというのである。

『菅江真澄遊覧記1』平凡社ライブラリー 菅江真澄 内田武志、宮本常一

同じく江戸時代後期に米沢藩が飢饉に備えて作った”かてもの”という本の復刻版 読下し本にも、カタクリの記述があった。「葉は干して食べる。生食は腹がくだる。根は粉にしたものをかたくりと言い、製法は”からすうり”と同じ」と書いていて、からすうりの製法は、「皮を剥いて白いところを寸々に切り、一日に一度ずつ水を替えて浸すこと4~5度したら搗き、汁を取って水分を飛ばすこと10回余りして餅だんごとして食べる」と書かれている。

陽が射しこむ雑木林や、日当りのよい山の斜面に群生し、4月下旬にもなれば一面がピンク色になる。多年草なので毎年同じところに生えるが、発芽してから花開くまでに7~8年かかるので、採り過ぎに注意。まだ蕾が開かないうちに茎からスポッと採る。花が開かないうちだと甘味がある。

保存する場合は葉をサッと茹で、カタクリ同士がくっつかないようにほぐして揉みながら天日で乾燥させる。

サッと熱湯にくぐすと花は紫色になる。お浸しや酢の物、クルミ和えで食べたり、葉を天ぷらで食べたりする。が、”かてもの”にも記載があった通り、カタクリは食べすぎると”お腹を下す”そうなのでご注意を。

 

■参考文献

山渓名前図鑑 野草の名前 春―和名の由来と見分け方 (山溪名前図鑑)』高橋勝雄

菅江真澄遊覧記 (1) (東洋文庫 (54))』平凡社 菅江真澄 内田武志、宮本常一

『月山の自然と出羽三山信仰の歴史が育んだ郷土料理レシピ集 西川の郷土食』山形県西川町

『かてもの<復刻版 読下し本>』米沢藩

『古里に伝わる山菜料理と地産食材を生かした料理レシピ』大鳥タキタロウ村

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