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大鳥池と曼荼羅/放浪写真家 栗田英樹

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

写真:栗田英樹

端書き / 田口比呂貴

大鳥に暮らし始めて5年。これまでに何度も大鳥池に足を運んできた。登山、草刈り、歩荷。目をつむってでも歩ける…とはいかないけれど、おおよその行程は染み付いている。そうそう、大鳥池といえば忘れてはいけないのがタキタロウ。3年前にタキタロウ調査をしたのも懐かしい。

年々思い入れが深くなっていく大鳥池。そして今回は、友人の栗田英樹さん(以下、クリちゃん)に「大鳥の写真を撮ってほしい」とお願いをしていたら、「10月に寝袋持って大鳥池いくわー」と連絡をくれた。クリちゃんは各地を転々とし、農作業の手伝い等をしながら写真を撮る放浪写真家。あてもなく、感じるがままに山を歩く人で、付いていくと冒険している気持ちになれる。

2018年10月中旬。好天とまではいかなかったが、大鳥池へ出かけることができた。午前9時に大鳥で合流し、登山口である泡滝ダムへと車を走らせる。駐車場に着いて身支度を整えるとゆっくり、ゆっくり歩いていった。仁蔵森、冷や水、七つ滝、七曲がり…。導かれているように何度も立ち止まり、数えきれないほどの写真を撮ってくれた。タキタロウ山荘に着くと、夕暮れに映える大鳥池がお出迎え。一息ついて山小屋に入ると「今夜はしゃぶしゃぶだぞ。友達も一緒に食べれ。」と管理人さんが声を掛けてくれた。大鳥でも、山小屋でもお世話になりっぱなしだ。豆腐、白菜、水菜、豚肉。それにビールとワイン…。顔を赤くして、いつしか床についた。翌朝早く、クリちゃんは大鳥池の撮影に出かけていた。「たぐピー、いつまで寝てるのよ。大鳥池、スゴイわよ。曼荼羅よー。」と興奮気味なクリちゃんに、まだ目が覚めない僕。ワインが少し効いたみたい。荷物が軽くなった帰りもまた、写真を撮りながらゆっくり歩いた。

出来上がった写真を見ると、一緒に歩いた山道を思い出す。せり出した岸壁、風で倒れた大木、冷たくておいしい沢水、調和がとれたように並ぶ木々、道端に落ちたたくさんのブナの実、誰かが敷いたであろう石畳、微かに出始めたナメコ。いつも素通りしていた自然を、たくさん見つけた大鳥池への旅路。

写真:栗田英樹