大鳥のこと

動画『深山幽谷 朝日連峰ー大鳥池』を公開。

2020年6月、大鳥池へと出かけて動画を撮影してきた。速足でいけば2時間半で辿り着く道のりを、6時間ほどかけてじわりじわりと登った。

カエルやミツバチ、降雨…。めぐり合う偶然とその景色、生命体に心が躍り、立ち止まっては直観の赴くままにカメラを回してもらった。

「現代人が見失ってしまったであろう“ゴースト”を探して…。」

まだ、山を遠くから拝んでいた時代。小泉八雲は宍道湖に浮かんだ小舟から陽に手を合わせて祈る人の姿があちこちとあり、感銘を受けたという。日本近代化の幕開けは西洋科学を多分にもたらし、山は神様が支配する時代から地形図を見る時代へと移り変わっていった。地図をみて登り、頂に立ち、全体像を把握することで、人々の心から恐れが少しずついなくなっていったのかもしれない。

大鳥にも「夜の山道でタヌキに化かされ、背負っていた肴を獲られてしまった。」という話が残っていたり、「山で“キツネ火”を見た。」という人がいる。経験と感を頼りに山を歩きまわった人たちの感覚はどんなだろう。想像を巡らせながら、原生林が残る奥山に入ることで取り戻せるものもあるのではなかろうか、と思っている。少なからず、予期できぬ落石や熊との出会いなどへ恐れを抱く気持ちはまだ、僕たちに残っているはず。

動画 『深山幽谷 朝日連峰-大鳥池』 撮影:2020年6月

企画-田口比呂貴 協力-三浦一喜 制作-NPOやまいろ