大鳥の献立

トンビマイタケの混ぜごはんと天ぷら ― ブナの木の香りを味わう ― 工藤朝男さん

舞茸やトンビマイタケ採りは、日頃から山を歩き回って倒木や枯れ木を何本もチェックしていないと出る木を探せないから週末ハイカーではなかなか務まらない。今回取材をさせてもらった工藤朝男さんは、天然のトンビマイタケや舞茸を安定して採ってこれる大鳥の山の玄人。家業の工藤商店で仕出しや生活用品の販売をしながら、50年近くも山菜・茸の採集・狩猟に従事し、山に明るい。

色が猛禽のトンビに似てるからトンビマイタケと言われ、手で触ると黒くなる変わったキノコ。「舞茸はナラの木に出るが、トビタケはブナ。そして、半分葉っぱの青い、半分枝枯れたとか折れた木に出るんだ。あれはおもしろいことに、一回その木が倒れて、倒木の下に木があると、そこに菌が移って2~3年後に出ると。上に移らないで、斜面の下に移るんだ。だから気を付けて見ておかねぇとな。」と、くたくたと柔らかい表情で活きた情報を教えてくれた。

「で、今日の料理は油炒めと茸ご飯と天ぷらやな。」と、こちらから促すことなく自前の刺身包丁でトビタケの根元を切っていく。「トビタケは舞茸と同じなんだども、天ぷらするには縦に手で裂いた方が歯触りが良くなる。炒め物なんかは、繊維に逆らって切る。要するに繊維が縦になってるから横に切る。そうすればかなり楽に壊れるし、小さいブロックになって食べやすい。ただ、トビタケご飯にする場合は、お米と一緒に炊き込んでしまうと汁が黒くなるわけ。それは結構でないから、炒めてからご飯に混ぜるというやり方が一番いいと。見た目も良いし、味もそれなりに。ブナの木の香りがするんだども、やっぱり油と合わないとうめぇって香りは出てこねぇんだ。」

早速、出来上がったトビタケの混ぜご飯を頂いてみた。が、“ブナの香り”というのがピンとこなくて、同じ山に住んでるのに情けないなぁ…と思いつつも、木のいい香りがする。少し硬いけど、噛むほど香りが鼻に抜けていく。朝男さんはトンビマイタケは天然も栽培も香りはさして変わらない、と言う。それでも、希少な天然モノにありつけたのは本当に有難かった。この日は朝から外出を控えたくなるほどの大雨で、去り際に「あー…。今日は休み。」っとつぶやいたのが朝男さんらしかった。調理法から保存方法まで丁寧に教えて下さったので、トンビマイタケを手に入れたらぜひ参考にしてみてください。

取材日:2018年8月16日 撮影:伊藤美加

トンビマイタケの保存方法

・生だと冷蔵庫で10日ほど持つ。ただ、菌が出て白っぽい粉がついたみたくなるが、洗えば大丈夫。

・生のトンビマイタケに醤油・砂糖・みりんを少しずつ漬けて、ナイロン袋に入れてエアー抜きながら汁が出るまで絞って、ギュッと縛って冷蔵庫に入れる。そうすると2か月は持つ。要するに漬物みたいになる。

・トンビマイタケを茹でてから醤油・砂糖・みりんを浸み込ませて同じようにナイロン袋にいれてギュッとして冷蔵庫入れた場合は1ヶ月は持つ。

※油炒めや天ぷらにして食べるなら、冷凍よりこのやり方の方が良いそうです。

※塩漬けしてしまうと香りが逃げてしまうのでおススメしない。

トンビマイタケの混ぜご飯の作り方

材料

  • トンビマイタケ:350g
  • 油:大さじ2
  • みりん:大さじ1
  • 醤油:大さじ2
  • 砂糖:大さじ1

作り方

1. 油を敷いた鍋にトンビマイタケをいれる。

2. 少し言貯まったらみりん、しょうゆ、砂糖を入れ、やわらかくなったらご飯に混ぜて完成。

※ナスやユーガオ、大根葉など旬の夏野菜を一緒に入れると炒め物にもなります。

※トンビマイタケをご飯と一緒に炊きこんでしまうとお米が黒くなってしまうのでご注意を。

トンビマイタケの天ぷらの作り方

材料

  • トンビマイタケ:100g
  • 砂糖:小さじ1
  • 醤油:小さじ1
  • 天ぷら粉:大さじ1

作り方

1. トンビマイタケを繊維に沿って縦に細かく裂いておく。

2. 裂いたトンビマイタケに砂糖・醤油を小さじ1ずつ加え、押し込むように浸す。そうすることで繊維の中に味が沁み込んでいく。

3. 軽く絞って、天ぷら粉を馴染ませたら170℃の油で揚げる。きつね色になったらキッチンペーパーに上げ、お皿に盛る。