山のめぐみ図鑑

マスタケ|鱒茸

傘肉がサーモンピンク色で、鱒の身に似ていることからマスタケと名がついた。幼菌では明るい黄色やオレンジ色で果肉も耳たぶのように柔らかいが、徐々に鈍い黄色になり、老菌になると退色して黒くなり、身がボソボソ、食べても苦いそう。

大鳥ではその年に採った山菜や茸を保存しておき、お盆や年夜、正月に合わせて一つ一つで手作りする慣習があるが、無明舎出版 編の『庄内の祭りと年中行事』で大鳥の正月料理にマスタケが使われていることが紹介されている。

年夜と正月料理の数々

お膳に付ける料理は、カラゲ(魚のエイ)を水戻しして甘辛く煮上げたカラゲ煮と、マイタケとマスダケと油揚げの煮物、ゼンマイ煮、ナメコの酢の物、タイの焼き物とウマヅラ汁。 一緒につくっておいた正月料理の方は、キンビラゴボウと黒豆煮、ミズ煮、昆布巻き、カラドリ芋煮、干し大根や青豆を入れて漬けたハリハリ漬けと水ようかん。

地域色が強いのは、代々伝わるマスの寿司。炊いたご飯と麹に塩マスを漬け、笹の葉にくるんで一カ月間発酵させてつくる伝統料理である。 そのほかにたけゑさんは、お孫さんの要望に応えて甘酒も準備していた。

9月頃、ミズナラの枯れ木などに傘が重なって生える。採取は幼菌で、傘が耳たぶのような柔らかいのものを選んで採る。素手で付け根から採り、袋にいれて持ち帰る。付け根の木屑や土を取り除いて調理するが、生では毒成分があるので十分に火を通す。また、「食べすぎても中毒になる」と言われるので注意が必要。

肉厚で鶏肉のような食感があり、油炒めや天ぷら、煮物などが合う。保存する場合は沸騰したお湯でサッと茹でてから塩漬け。もしくは米・麹・マスタケを笹の葉で包んで一ヶ月ほど発酵させ、馴れ鮨とする。茹でてから冷凍してもOK。

また、ヨーロッパで自生する山菜や茸、木の実などの生態とレシピを紹介している、『WILD FOOD』でもドイツ語圏の国では良く知られているキノコとしてマスタケを紹介している。ベーコンと一緒に炒めたり、揚げて食べられたり、キャセロールという豚肉や牛肉と野菜や調味料をとろ火で煮込んだ料理にT使われる、とある。

■参考文献

月山  山菜の記』芳賀竹志

よくわかるきのこ大図鑑―場所 かさ 柄 胞子』小宮山勝司

『採れたて田麦 田麦俣の山菜・きのこの味』鶴岡市企画部地域振興課

WILD FOOD』Phillips Roger

 

■参考URL

きのこ採りシリーズ⑧ マスタケ・ヌケオチ | あきたの森づくり活動サポートセンター