ナメコ|滑子
日本固有のキノコである滑子。自然発生地は主に東北の日本海側の山地など、ブナ林帯に分布している。名の由来は全体が粘膜に覆われ、ぬるっとしていることから滑らっこ”が転訛したと言われる。
岡村稔久著の「日本人ときのこ」では、江戸後期に東北を旅した菅江真澄の遊覧記でナメコに関する記述がある。
(秋田湯沢では)人家にキノコが沢山干してあった。はきもたせ(ホウキタケ)、舞茸、貫打(エゾハリタケ)、しいたけ、ししたけ、しめじ、なめらこ(なめこ)、まかね(キシメジ)、むきたけ、かぬか(ブナハリタケ)、さもたせ(ならたけ)など。それを汁の実とし、おかずにもする。また、漬けてすしにしたり、香物として朝夕の食前に出したりしている」
ナメコは天然ものを採集し、食す時代が長く続いたが、昭和に入ると大鳥でナメコの栽培の試みが始まる。昭和5年(1930)にはナメコの人工栽培が計画された。とはいえ、刈り倒したブナの老木を林の中に積み重ねるだけか、天然ナメコをすり潰して水と混ぜ、それを原木に塗りつけてナメコが出るの待つというものでだった。その栽培法が上手くいったかはわからないが、昭和7年(1932)の産物報告では寿岡集落の三浦長七が始めたキノコの瓶詰めの生産量が152箱となっている。この頃には既にキノコを栽培・加工し、販売する試みが始まっていた。
その後、昭和17年(1942年)に当時学生だった森喜作(のちに森産業株式会社の創始者)が種駒によるシイタケの原木栽培方を発明、ナメコにも応用された。現在では大鳥でも森式、河村式などの種駒を原木に植え付けて発菌を待つ、原木栽培が行われている。
ナメコは紅葉に入る10月中旬頃から雪を被る12月頃まで、ブナなどの広葉樹の倒木や枯れ木、切り株から出る。採取はナイフで根元から切ると木屑が付きにくく、キレイに取れる。ビニール袋に入れて持ち帰る。
原木栽培の場合は、春先にブナ等を伐り倒して3尺程度(約90㎝)に玉切りし、林の中など日影に重ならないよう並べて置く。農作業も落ち着いた7月頃になるとホダ木にドリルで穴をあけ、種駒菌を植え付けて待つ。豊凶はあるが、植え付けた翌年秋から出るようになり、5年程度は同じ木から出続ける。
採取したナメコは綺麗なシートの上に広げ、虫喰われやサイズの選別をしながら一つ一つ石づきをハサミで切る。大鳥ではナメコを粒、中開き(一般的な原木ナメコ)、開きの3種に分け、粒はナマス等で食すのに向き、開きはお汁に向いています。石づきを取ったらナメコに付着した木屑などを浮かせるために30分ほど水に浸し、洗い流す。すぐに食べる場合は冷蔵庫で保管し、一週間以内に食べる。ナメコは水で洗うと鮮度が落ちが早まるので、生の状態を送る場合は木屑が付いたまま送る。塩蔵する場合は沸騰したお湯でサッと茹で、樽に入れて塩漬けに。最近では冷凍保存もするが、使用する際は冷凍したまま沸騰したお湯に入れる。そうすると型崩れしない。
特有の滑りとコリコリとした食感がある。お味噌汁やうどんや蕎麦にも入れるのが定番。大根おろし和え、醤油を垂らしてご飯と一緒に食べるのもおススメ。
■参考文献
『きのこの呼び名事典 写真でわかる』 大作晃一
『日本人ときのこ (ヤマケイ新書)』岡村稔久
『朝日村史』朝日村教育委員会
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原木なめこ|生・塩蔵
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