大鳥の献立

伽羅蕗(キャラブキ)―初夏の山と懐かしさを味わって。― 工藤あき子さん

一昨年の夏だったか。何かの用で工藤あき子さんの家に伺った時におすそ分けで頂いた伽羅蕗がとても美味しかった。料理を取材するようになってから、『伽羅蕗はあき子さんにお願いしよう…』と決めていた。季節がきたので電話すると、「今日の午前だったら最高よかったのに。フキいっぱい採ってきたんだぞ。あとみなペロッと皮剥いてしまったもの。笑」と冗談交じりに聞かされたが、なんとなく、運の悪さを自省したくなった。それでもお願いすると、翌日の午後から取材をさせてもらえることに。ありがたや。

工藤あき子さんは19歳に嫁入りをして以来ずっと、大鳥繁岡集落で暮らす。おじいさん、おばあさんは山にいくのが好きで、家庭料理は任されることが多く、自然に山の料理が身についていった。最近金婚式を迎えたそうで、茶の間には子供、孫たちに囲まれ嬉しそうにうつるあき子さんと、夫の友二さんの写真が飾られていた。

伽羅蕗はフキの茎を醤油や砂糖で伽羅色(黒茶色)に煮詰めた料理のことで、早い話が佃煮だが、採取した後の下処理には手間がかかる。軽く沸騰したお湯にフキをサッとくぐし、綺麗な薄黄緑色になったら玄関に引かれた沢水にさらす。「あっちゃい(熱い)とフキに触れねぇ。冷えた時が剥くに一番良いな。でもあんまり水に漬けると、かえって剥けなくなるんだっけ。漬けて置くのはせいぜい一晩くらいだな。」と、経験に基づく貴重なご指南をいただいた。山の水が豊富に使えることも羨ましい。皮は包丁を使って一本ずつ剝いていく。さすがの慣れた手つきで、茎があれよあれよと裸になるのは見ていて面白かった。剥けたフキは一晩水にさらしてアク抜きする。

舞台は台所に移り、刻んだフキを鍋にいれ、砂糖、醤油、酒、みりんを合わせて30分、コトコト煮込む。時間になると、ツヤツヤの伽羅蕗ができあがった。おすそ分けで頂いたあの味と同じで、とっても美味しかった。

「こういう時は、一気に作って冷凍しておくのがいい。ただ、おらいでは親父が山菜喰わねぇから、人来るとホイホイってくれてな。そうやって田口くんにもくれたっけろかな。」と、おすそ分けを頂いた背景を知りつつ、毎年100kgほどのフキを樽に塩漬けしていることを聞き、もっと驚いた。

取材日:2018年7月7日 撮影:伊藤美加

 

下処理(皮剝き・アク抜き)

1.大鍋を火にかけ、沸騰したらフキを入れて5~10分湯通しし、皮を剥いてみる。

2.鍋から上げ、冷水に浸す。

3.包丁やナイフを使って一本ずつ皮を剥いていく。※時間はかかるが爪でも剥ける。

4.一晩水に浸し、アク抜きをする。

※忙しくて皮剥きの時間が取れない時は、先に冷水に一晩浸してアク抜きし、翌朝皮剥きしてもいい。

伽羅蕗(キャラブキ)の作り方

材料

  • フキ  -  500g
  • 砂糖  -  100g
  • 醤油  -  大さじ6
  • 酒   -  大さじ6
  • みりん -  大さじ6
  • 唐辛子 -  少々

作り方

1.フキを5cm程度に切り、鍋に入れて火にかける。

2.砂糖、醤油、酒、みりんを入れる。

3.30分程度、水分がなくなるくらいまで弱火で炒め、仕上げに唐辛子を入れる。

4.盛り付けの際、お好みで白ごまも入れる。

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