ウワバミソウ|蟒蛇草 赤ミズ
正式名をウワバミソウ(蟒蛇草)と言い、「茎が柔らかくて水分が多いこと」が名前の由来という説もあるが、別名ミズやミズナと呼ばれ、水菜はもともと2年草の壬生菜のことで、訛ってミズナとなった。その水菜のミズをつけたのだろうという推測もある。他にも、蛇を水の象徴とし、「大蛇の出そうなところに生えているから」という説があるが、どれが本当かはわからない。蟒蛇(うわばみ)というのは大蛇を意味するのだとか。
根っこの部分が赤いことから、大鳥では赤ミズと呼ばれています。
6月下~7月上旬にミズが盛りを迎えると山菜シーズンの終わりを感じさせるが、自家消費用であれば9月頃まで食べられる。ミズの息は長い。日が当たらず湿り気のある沢沿いや、沢近くの杉林に生えている。高さ30~60㎝にもなるイラクサ科の多年草。手で引っぱると根っ子ごと簡単に抜けてしまうので、”たたき”などで使用する時以外では根が抜けないよう気を付けながら茎を折って採取します。
採集後は近くの沢水に浸しておくと傷みが少ない。「毎年取ってるところはぬるめきがあってうめぇ。太いのは毎年とって、細いのは置いて育てんなや。みんな取ってしまうと数年はダメになる。」と地元の人から貴重な山の経験知を教えてもらった。
左が赤ミズ。右が青ミズ。根っこの色が違う。
左が赤ミズの葉。右が青ミズ(ヤマトキホコリ)の葉。形が微妙に違う。
ミズは皮の繊維が硬いので、採集したら葉を取り、茎の皮を剥く。葉は天ぷらで食べる地域もあるそうですが、大鳥では食べる慣習はない。シャキシャキした歯ごたえと、ヌメリのあるミズは、お汁やお浸しが大鳥の定番。根はヌメリが特に多く、タタキにして食べられる。お盆の精進料理としてミズ汁が出されたり、戦中・戦後の食料難時代には糧飯の材料に使われていた。
まt、お盆過ぎ~初秋になるとミズは節に実をつける。これを”ミズの実”とか”ミズタマ”と言い、生のまま塩をふりかけるだけ(ミズの実の塩こくり)で、良い山のおつまみになる。
■参考文献
『野草の名前秋・冬―和名の由来と見分け方 (山渓名前図鑑)』高橋勝雄
『採集―ブナ林の恵み (ものと人間の文化史)』 赤羽正春