フキノトウ|蕗の薹 バンケ フキ|蕗

春の訪れを告げる山菜、フキノトウ。雪の消え間からポコポコと道路端に顔を出すのフキの新芽をフキノトウといい、大鳥を含む山形県庄内地方ではバンケと呼ばれるのが一般的。成長するとフキになる。古名、山生吹(やまふぶき)がフキの名の由来。キク科、フキ属の多年草。

江戸時代後期に米沢藩が飢饉に備えて作った”かてもの”という本の復刻版 読下し本ではフキについて、「葉も茎も茹でて食う。カテモノとしては灰汁水で茹でずに一晩浸すべす。フキノトウもカテモノとすべし。茹でて、流れ水に一晩さらしておいて苦味を取る」とある。

フキノトウは3月下旬頃から少し湿り気のある山道や田んぼの畔、沢沿いの地面から生えてくる。採取は、まだ苞が開かないうちに手でひねりもぎ採る。

ほろ苦い味わいで、天ぷらによく合う。味噌・砂糖・みりんと一緒に炒めてバンケ味噌を作り、ご飯にかけて食べるのが大鳥では定番。細かく刻んで味噌汁に入れてもOK。フキノトウは保存はしない。

フキノトウはやがて苞を開かせて茎が伸び、6月にもなると円く大きな葉を広げたフキとなる。採取は6月中旬~7月上旬頃までで、30~50cmくらいに伸びた頃に根元から折り取る。葉は食べないので現場で取っておく。帰宅したら、ミズと同じく皮が硬いので皮剝きをする。硬い根本は切り落とし、2寸くらいに折りながら皮を剥いていく。皮が剥けたら調理できるが、大抵は塩漬けで保存し、盆や正月などの行事や普段食で煮物にすることが多い。大鳥では汁物や、伽羅蕗(キャラブキ)などの煮物が定番。油炒めにも合う。

※伽羅蕗:フキの茎を醤油で伽羅色にし、砂糖・酒なども加えて煮詰めた料理

 

フキの葉は大きいので、モノを包むに向いている。大鳥のおじいちゃんから聞いたシオデの蒸し焼きに、フキの葉を使う。

「火たいてどんとくべるわけ。焼くわけだ。シオデをポンポンと追って、フキの葉でくるんで味噌を入れて、焚き火してくべて、そうして食わせるもんだっけ。すんごく美味しいんだ。フキの香りもするし、シオデの香りもするし。フキの葉っぱも燃えないもんだ。青いもんだから。焚き火しろっていったって、そんなにドンドンと燃やすんじゃないんだ。直火であっためるようにしてちょっと焚いて。そしてそれさ焼いて。そしてそれが、マコノコばーちゃんの話、言うもんだっけ。」

シオデとフキの葉っぱが採れたらぜひチャレンジしてみたい一品です。

その他、フキの葉で切り傷などの血を止めたり、フキの葉の縁にぐるっと水滴がつく時は良く晴れるとも言われる。

■参考文献

山渓名前図鑑 野草の名前 春―和名の由来と見分け方 (山溪名前図鑑)』高橋勝雄

『かてもの<復刻版 読下し本>』米沢藩

オオバギボウシ|大葉擬宝珠 ウルイ

ユリ科ギボウシ属の山菜。葉が他の仲間より大きいから大葉、つぼみが橋の欄干の擬宝珠に似ていることか大葉擬宝珠という名がついたそう。また、東北ではウルイの名で知られ、大鳥でもそう呼ばれている。春先の若芽の頃の葉がウリ類の皮に似ていることから瓜菜が転訛したという説がある。

5月中旬頃から、日当たりのよい湿った崖や沢沿いの岩場で見かけることが多いので、場所によっては危険を伴うことがある。水気がある滑りやすい岩場なので、足元には十分注意。採取は葉が開ききらないうちに土際の根元からもぎ取る。採集したら沢水などに浸してから持ち帰る。丈夫で株が増えやすいことから山のウルイを自宅の堀近くや湿地に移植して、畑で採集する人もいる。

成長して葉が大きく開いたものも食べられるが、多少苦味があるので、調理の際は茎の部分だけを使うのが大鳥では一般的。保存は行わないが、地域によっては乾燥させ、ヤマカンピョウという名で保存食として利用されているそうです。

シャキシャキとした食感で、多少ヌメリと苦味がある。採取したらそのまま調理ができる。サッと茹でたものを適当な長さに切ってマヨネーズに漬けたり、クルミ和え、胡麻和え、酢の物、汁物などに合う。山菜汁の具材としてもよく使われる。

江戸時代後期に米沢藩が飢饉に備えて作った”かてもの”という本の復刻版 読下し本では、”うるゐ”と書かれ、「茹でて食う。もしくはカテモノとする。」と書かれていて、シンプルな食べ方がされていたようだ。

 

■参考文献

山渓名前図鑑 野草の名前 春―和名の由来と見分け方 (山溪名前図鑑)』高橋勝雄

山菜 (山渓フィールドブックス)』木原浩

よくわかる山菜大図鑑―新芽 葉 実 花』今井國勝/今井万岐子

食べて効く! 飲んで効く! 食べる薬草・山野草早わかり』主婦の友社

『とれたて田麦 田麦俣の山菜・きのこの味』鶴岡市地域振興課

『かてもの<復刻版 読下し本>』米沢藩

キヨタキシダ|清滝羊歯 赤コゴミ

正式名はキヨタキシダと言いますが、大鳥では”赤こごみ”という名で通っている山菜。クサソテツ(青コゴミ)と同じシダ類で姿が似ているが、茎が赤茶色なことからその名で呼ばれる。また、株というよりはまばらに生えることから”一本こごみ”とか、油がのっているような舌触りから”油こごみ”と呼ぶ地域もある。語源は京都の清滝地域で発見されたことから名づけられたという説や、清岳という山の名前からとられたという説などがあるが、ハッキリしない。

5月上旬になると湿った林の中や沢沿いなどの日影の地面から芽を出しはじめる。採取は10cm程度に育った、なるべく茎の太いものをポキッと折れるところから一本ずつ折り採る。一本一本がまばらに生え、細いのでまとまった量の採集には時間がかかる。

ワラビのようなアクはないので、採取したらそのまま調理できる。さっと茹で、胡麻和えやクルミ和えにしたり、お浸し、油炒めにするのが大鳥では定番。保存する場合は天日で乾燥させる。

ぜんまいと同じように筵やゴザの上で天日に干し、3時間置きに日が暮れるまで揉む。茎が細いので1~2日で乾燥できる。カラカラに乾燥したらビニールにいれて保管。乾燥させると水分が抜け、質量が1/10程度になり、使う時は水に浸しすと元に戻る。上手に揉んで天日乾燥された赤コゴミは歯触りがよく、繊維が潰れて旨みが増す。

お盆の仏様へのお供え物や正月料理、親族の集まりでのご馳走、冬の保存食として使われる。

 

■参考文献

月山 山菜の記』 芳賀竹志

『採れたて田麦 田麦俣の山菜・きのこの味』鶴岡市地域振興課

クサソテツ|草蘇鉄 青コゴミ

正式名はクサソテツ(草蘇鉄)ですが、大鳥を含め、東北ではこごみと呼ぶのが一般的。新芽がクルクルと巻いていて、かがんだ(こごむ)ように見えることから、かがみがコゴミに転訛したそうです。

江戸後期に東北を旅した菅江真澄の記録には、こごみに関する記述もあり、この時代から既に食べられていたことがわかる。

ある老人が山菜とりにいってきたみやげといって、ほな(ヨブスマソウ)、いはだら(サラシナショウマ)、あいぐき(ミヤマイラクサ)、こごみ(クサソテツ)、しほで(シオデ)、しどけ(モミジガサ)、ふすべ《せんなうともいった、わさびのことである》、もちぐさ《蒲公英》など、わたくしの聞き知らぬ菜もたいへん多い。

引用文献:『菅江真澄遊覧記1』平凡社ライブラリー 菅江真澄 内田武志、宮本常一

青こごみはシダ類の多年草。4月下旬~5月上旬頃になると、湿り気のある林や沢沿いの地面から青こごみが頭を出し始める。成長が早く、一週間も過ぎると伸びて硬くなり始めるが、残雪がある沢筋などでは5月中旬~下旬頃まで採集できる。集落周りから採りはじめ、日が経つにつれて奥へ奥へと採りに行く。まだ若芽のうち、茎がなるべく太いモノを芽から5~10cm程のところを手で折って採取します。一株から3~5本、多いと7~8本くらい生えるが、採取する際は株を弱らせないよう2~3本を必ず残す。

採集した青こごみは、すぐ調理するものは冷水に付けた後に水を切ってビニール袋などに入れて冷蔵庫で保管。乾燥・塩蔵保存はしないのが一般的ですが、冷水で洗い、水を切ったものを冷凍保存することも可能。

こごみは蕨やぜんまいのようなアクがなく、下処理も扶養。味にクセもないので、調理しやすい。茹でると少しヌメリがある。炒めものや和え物、煮物、天ぷら、お浸し、何でも合います。パスタの具材としても使えるし、ピクルスもOK。大鳥では、クルミ和え、ゴマ和え、お浸し、天ぷらなどで食べるのが一般的。

 

■参考文献

おいしい雑草 摘み菜で楽しむ和食』平谷けいこ・赤間博斗

菅江真澄遊覧記 (1) (東洋文庫 (54))』平凡社ライブラリー 菅江真澄 内田武志、宮本常一

『採れたて田麦 田麦俣の山菜・きのこの味』鶴岡市企画部地域振興課

タラノメ|楤芽

タラノメは、タラノキというウコギ科の落葉低木の新芽のこと。日当たりがよい林や藪などに生え、5月上旬~中旬頃に若芽が出始めてたところを採取します。タラノキの幹や枝にはトゲが生えていて素手だとかなり痛い。軍手や手袋をし、先端の若芽の付け根を持ち、はかまのところから折り採ります。はかまは食べないので取っておく。採り方の注意は、タラノキの枝からいくつかタラの芽が出ていても、先端の一番芽だけを採ること。2番芽、3番芽は残さないと、枝が枯れる。

ほのかな苦味ともっちりした触感があり、何と言っても天ぷらが定番。胡麻の和え物や、炒め物にも合います。大鳥ではあまり塩蔵されないので、この時期しか食べられない貴重な食材。

■参考文献

よくわかる山菜大図鑑―新芽 葉 実 花』今井國勝、今井万岐子

カタクリ|片栗 カタコ

大鳥で”カタコ”と呼ばれるユリ科カタクリ。片栗粉の片栗は、元はこのカタクリ。明治の開拓以後、北海道で大量のジャガイモが作られ、代用されるまではカタクリの根を堀り、洗ってすり潰して使っていました。大鳥でも昭和初期まではカタクリの根からカタクリ粉を作っていました。

語源は万葉集で大伴家持が詠んだ歌の中で堅香子(かたかご)と呼ばれていたからという説や、片葉の葉に鹿の子模様が入っているので、片葉鹿(か)の子⇒カタカゴ⇒カタクリに転化したという説など、ハッキリしていない。

江戸後期に東北を旅した菅江真澄の記録には、カタクリに関しての記述があり、庶民にも馴染みのある山菜であったことがわかる。

十九日 例のように古城の跡で遊び、かたこの花(かたくりともいう)にまじって咲いている菫があったのを、女の童は、これは里かたこだと摘みとった。すみれ草をさとかたこばなというのである。

『菅江真澄遊覧記1』平凡社ライブラリー 菅江真澄 内田武志、宮本常一

同じく江戸時代後期に米沢藩が飢饉に備えて作った”かてもの”という本の復刻版 読下し本にも、カタクリの記述があった。「葉は干して食べる。生食は腹がくだる。根は粉にしたものをかたくりと言い、製法は”からすうり”と同じ」と書いていて、からすうりの製法は、「皮を剥いて白いところを寸々に切り、一日に一度ずつ水を替えて浸すこと4~5度したら搗き、汁を取って水分を飛ばすこと10回余りして餅だんごとして食べる」と書かれている。

陽が射しこむ雑木林や、日当りのよい山の斜面に群生し、4月下旬にもなれば一面がピンク色になる。多年草なので毎年同じところに生えるが、発芽してから花開くまでに7~8年かかるので、採り過ぎに注意。まだ蕾が開かないうちに茎からスポッと採る。花が開かないうちだと甘味がある。

保存する場合は葉をサッと茹で、カタクリ同士がくっつかないようにほぐして揉みながら天日で乾燥させる。

サッと熱湯にくぐすと花は紫色になる。お浸しや酢の物、クルミ和えで食べたり、葉を天ぷらで食べたりする。が、”かてもの”にも記載があった通り、カタクリは食べすぎると”お腹を下す”そうなのでご注意を。

 

■参考文献

山渓名前図鑑 野草の名前 春―和名の由来と見分け方 (山溪名前図鑑)』高橋勝雄

菅江真澄遊覧記 (1) (東洋文庫 (54))』平凡社 菅江真澄 内田武志、宮本常一

『月山の自然と出羽三山信仰の歴史が育んだ郷土料理レシピ集 西川の郷土食』山形県西川町

『かてもの<復刻版 読下し本>』米沢藩

『古里に伝わる山菜料理と地産食材を生かした料理レシピ』大鳥タキタロウ村

わらび|蕨

わらび餅のおかげで名前はよく知られた山菜。11月頃にわらびの根を掘り、水洗いしたものを木製の細長い舟のような器の中に入れて杵で搗きつぶす。根舟という舟に入れ替えて水を張り、澱粉を沈殿させて、わらび粉を取っていた。そのわらび粉でモチにしたのが元々のわらび餅。江戸時代後期に米沢藩が飢饉に供えて作成した”かてもの”という書物の中でもわらびの粉の取り方が細かく書かれている。1950年代、戦後の食糧難の時代の頃までは山村集落で作られていた。現在のわらび餅は片栗粉と同じようにイモ類の澱粉を使っている。

語源は万葉集で志貴皇子が歌の中で「石ばしる 垂水の上の さ蕨(わらび)の 萌え出づる春に なりにけるかも」と詠まれ、ワラビの新芽が”童の手”のようだからという説や、アク抜きしたワラビの色が燃やした藁に似ていることから「藁火」という説など。定かではない。ちなみに山形県には、蕨野、蕨岡、大蕨といった蕨のつく地名が幾つかある。

ウツギザクラが咲く5月下旬~6月上旬頃、日当たりのよい斜面にわらびが一斉に生えてくる。葉が開かないうち、太いモノをポキッと折れる部分から一本一本折り取る。大鳥では紫わらび、青わらび、藪わらびの3種に分けられる。青わらびは普通のわらび。藪わらびは背丈70cm程度に育っても硬くならず、太くて粘り気の強い極上のわらび。とはいえ美味しいわらびか否かは採る場所で決まるのだとか。青わらびでも美味しいのとそうでないものがある。場所次第。

採り損ねたり、細くて採らなかったわらびは夏前に草刈機で刈る。そうしないと雑草に負けて伸びなくなる。刈ったその年にも再びわらびが生えてくるが、それを採ると細くなるので翌年に採る。

自宅の畑や転作田、持ち山の斜面にわらびの根を植え、わらび畑にして毎年採る人が多い。植え付けは11月頃に山からわらびの根を掘って採り、植える。この時期のわらびは土中の根から芽が出始めている。それがあると来年の春にはワラビが生えてくるので、雪降る前のこの時期に根を採ってきて畑に植える。一度植えてしまえばずっと出続けるし、ぜんまいと違ってあまり細くならないそう。

「わらび採りいかねかー?」と地域のおばあちゃんに誘われるがままに連れていってもらったことがある。朝5時、朝露でびしょ濡れになるのでカッパ着用して集落近くの道路脇斜面でせっせと採る。小てんごと大てんごを持って行って、小てんごいっぱいに、5kgくらいずつを採っては大てんごに移して採る。丁度良い太さのわらびをポキっと折れるところから折り採ると思ったら、次に採るわらびに手を掛ける。「次にどのわらびを採るかを探しながら採るんだや。」と教わったが、山菜採り一年生だった頃は藪のどこに良さそうなワラビが生えているか、目を凝らさないと見つけられなかった。70過ぎのおばあちゃんと言えど、採るスピードは早い。2時間で20kgほどを採ると自宅に帰り、自宅用、保管用、出荷用に分け、長さをそろえて根元を切り揃える。1束400gずつにして根元に近いところを昔は藁で、今は輪ゴムで縛っている。縛った部分が固くなるので、根本近くで縛るとロスが少なくなるのだとか。

自宅用や保管用は塩漬けにする。束ねたわらびを樽の中に入れ、ホームセンターに売っている10kgとか30kgの並塩をドサッと入れて、内蓋、重石をして蓋を絞めて倉庫に保管。お盆の頃には食べれるようになっている。

ワラビはアクが強いので、生で茹でたりしては食べれない。昔は囲炉裏や薪ストーブから出た灰で、現在はもっぱら重曹でのアク抜きをするのですが、塩漬けにすると不思議なことにアクが抜ける。

わらびのアク抜き方法

一晩水に浸けたり水を何度か入れ替えたりして”塩抜き”したらさっと茹でてお浸しにしたり、たたきにしてご飯にかけて食べるのが定番。大鳥ではわらびを切らずにめんつゆにつける”わらびの一本漬け”という料理があるのですが、これが結構おいしい。めんつゆだからと言って侮るなかれ。

 

■参考文献

おいしい雑草 摘み菜で楽しむ和食』平谷けいこ・赤間博斗

『かてもの<復刻版 読下し本>』米沢藩

『山形県の地名―その語源をたずねてー』安彦好重

コシアブラ|漉油

コシアブラ(漉油)は、杉林などの雑木林に生えている。語源は実を絞って油を漉し採ったとされていたからという説と、越後の油という意味で、「越油」から説がある。大鳥では5月上旬に新芽を手で摘み取って天ぷらにするのが慣習。苦味はあるが、旨みもあって美味しい。ちまたでは”山菜の女王”なんて呼ばれていたりもするそう。

「新芽が出かけの時期のコシアブラを天ぷらにするのが最高にうまい!」という大鳥人も。ちなみに、コシアブラの産毛は大鳥を含む寒い地域ではあるけど、平地などはあまりないとも言われる。

天ぷらが定番ですが、お浸しや炒めものにも使います。パスタの具材のアクセントとして一緒に炒めるのも良いと思います。

木材としては山形県米沢市の”おたかぽっぽ”と言われる木の一刀彫にも使われる。

■参考文献

おいしい雑草 摘み菜で楽しむ和食』 平谷けいこ・赤間博斗 山と渓谷社

モミジガサ|紅葉笠 シドケ

キク科コウモリソウ属の植物で、学名はモミジガサ(紅葉笠)。その名の通り葉っぱがもみじの形をしています。葉を菅笠にみたててモミジガサと名付けられたのだとか。ブナ林の谷筋の斜面や湿っぽい林に生える。

つやのある濃緑の葉。

20~25㎝程度のもので、茎が太く、葉が開ききらない状態のものを根本近くからポキッと自然に折れるところで採取します。葉がトリカブトと少し似ているので、誤って採取しないよう注意が必要。

保存は塩漬けですが、大鳥ではあまり保存せずに旬の時期に天ぷらやお浸しで食べることが多い。

かじるとほろ苦く、鼻に抜ける独特の香りがする。茹でるとあくが抜けますが、茹ですぎると香りも飛んでしまう。苦味を味わいたい方はさっと茹でてお浸しやごま和え、苦味が苦手な方は天ぷらや油炒めなどがおすすめ。

 

■参考文献

野草の名前秋・冬―和名の由来と見分け方 (山渓名前図鑑)』高橋勝雄

ミヤマイラクサ|深山刺草 アイコ

学名をミヤマイラクサと言いますが、東北地方では”あいこ”の名前で親しまれています。大鳥地域ではさらに訛って”エーダケ”とも呼ばれる。刺の古語を”いら(刺)”と言ったのでイラクサ(刺草)。その名の通り、茎や葉にはトゲが生えていて、素手で触るとかなり痛い。茎皮は繊維の材料になっていたというが、麻よりもかたくて積みにくいものだそうだ。

約200年前に米沢藩が度重なる飢饉の救済策として作った食の手引書『かてもの』には深山蕁麻(イラクサの漢名)と記述され、「さっと茹でて食べるか、カテ物として食べる。」とあり、この時代には既に食されていたと確認できる。

茎から出ている白いのがトゲ。

5月上旬~中旬になると、山の沢筋、湿った岩場、斜面など、湿地帯に生えてくる。20~30cm程度のあいこを軍手等をはめて根元から折り採る。茎が太く、葉が開き切らないものが良い。

あいこはクセがなく、万人向きの食べやすい山菜です。トゲがあるので加熱処理は必要ですが、しゃきしゃきとした触感で、汁物に入れても良いし、クルミ和えなどの和え物や、お浸しにしても美味しい。

 

■参考文献

野草の名前秋・冬―和名の由来と見分け方 (山渓名前図鑑)』高橋勝雄

『朝日村史』朝日村教育委員会