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大鳥とわたし vol.4 / 冬の狩猟文化 本間かりん

「古老」綿布を張ったパネルにテンペラ

この絵は、ウサギを追って雪山を登る大鳥の工藤朝男さんを描いたものだ。巻狩りで一緒に山を歩かせてもらったのだが、ペタペタと雪に足をとられながら歩く私の前を、朝男さんは驚くほどのスピードで登っていく。朝男さんの足元だけ雪がなくなっているんじゃないかと思うくらいに…。その後ろ姿がかっこよく思い絵にした。

私は元々、グロテスクなものが苦手だった。血や内臓といったようなものを見ると、なんだかぞわぞわして怖かった。それが、解体を生で見た時に全く違う感覚を覚えた。

きっかけは、通っていた大学のゼミ実習で、ウサギの巻狩りに参加した時だった。雪山を必死に登りながら大声をあげてウサギを追い詰め、その場でウサギが捌かれていくのをジッと眺めていると、自分の中で違和感なく受け入れられていることに気が付いた。

「いただく」綿布を張ったパネルにテンペラ

この絵は、「動物」が「食材」に変わりゆく様子を描いたものだ。 大鳥で催されたカモの解体イベントに参加したことがあった。水辺に浮かんでいたカモが見慣れた肉片へと捌かれていく。私は、いつの間にか嫌悪感は抱かなくなっていた。むしろ、普段食べている肉はひとつの命なのだと気付かされた。

狩猟は、ただ動物を狩るという行為だけでなく、私のような何も知らない人に大切なことを教えてくれる文化なのかもしれない。

2019年2月

山形県鶴岡市出身。東北芸術工科大学にて歴史学や考古学、民俗学を学んだ後、現在は山形大学大学院にて絵を描いている。東北芸術工科大学に在学中、東北文化研究センターにて刊行された冊子「東北一万年のフィールドワーク13 大鳥」の制作に2015年から関わり、大鳥を知る。

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