
赤ミズの味噌汁 ―涼しい日はスタンダードな味噌汁で、蒸し暑い日は冷や汁で。― 工藤あき子さん
雪国料理はやたらと汁物が多い。ミズ汁、タケノコ汁、なめこ汁、ヒラタケやモダシのお吸い物、ウサギ汁、キジ汁、熊汁…。みな山からの頂き物をメインにして、ダシに醤油か味噌で合わせていただくシンプルな料理。汁物が多いのは体が温まるから、みんなで分ける事ができるからだよ、と地元の人に教えて貰ったことがある。そうそう、大鳥は半年間も雪に囲まれてるし、かつての囲炉裏の真ん中にいつも汁物があった。
しかし、夏には”冷や汁”という味噌を冷水で溶いたものにキュウリやらミズやらを入れる食べ物があり、もとは夏山での塩分補給の為に食されていたらしい。そして、赤ミズは味噌汁にも冷や汁にも使われてきました。今回は下処理の方法から、作り方を繁岡集落の工藤あき子さんに教えてもらった。
あき子さんは19歳で嫁入りをしてから50年以上が経つ。おじいさん、おばあさんは山にいくのが好きで、家庭料理は任されることが多く、自然に山の料理が身についていったそうだ。最近金婚式を迎えたそうで、茶の間には子供、孫たちに囲まれ嬉しそうにうつるあき子さんと、夫の友二さんの写真が飾られていた。
ミズは名の通りみずみずしく、シャキっとした触感があるが、調理に入る前の皮剥きには手間がかかる。冷水にさらしておいたミズを上げ、一本ずつ葉を手でこいて取り、食べるくらいの長さに茎を折りながら薄皮を剥いていく。「他の人たちはいっぱい採っておいて親父に皮むきをさせるあんだとや。でもおらいの親父はぜったい触らねぇ。笑」と冗談を言いながら、ヒョイヒョイと皮剝きをこなしているあき子さん。
皮剝きしたミズは沸騰させた鍋に入れ、5~10分ほど弱火でじっくり煮る。ミズが柔らかくなったら厚揚げ、ダシ、それにあき子さんお手製の味噌を入れて味を調える。「お盆になると、東京から孫だかし来るろ。そういう時にミズを食わせるとうまがんなやな。」と嬉しげに語るあき子さんは、毎年30kgもの自家製味噌を作っている。どおりで美味しいわけだ。今、大鳥で手前味噌を作っている人は殆どいない。今度は味噌作りを習いにいきたいと思う。
取材日:2018年7月7日 撮影:伊藤美加
ミズの下処理(皮剝き)
1.一本ずつ葉っぱをもいで、半分に折る。
2.折ったところからに手で薄皮を剥ぎながら食べるサイズ(5㎝前後)に折っていく。
3.水洗いする。
ミズの味噌汁の作り方
材料(4人分)
- ミズ - 300g
- 水 - 900ml
- ダシ - 適量
- 厚揚げ - 半丁
- 味噌 - お好みで調整。
作り方
1.水を沸騰させた鍋に折ったミズを入れ、柔らかくなるまで5~10分ほど煮込む。
2.ミズが柔らかくなったら厚揚げを入れ、味噌とダシで合わせる。
夏にピッタリ。ミズの冷や汁の作り方
味噌を冷水で溶き、皮剝きしたミズをさっと茹でて入れる。ヒンヤリした気分にさせてくれる、夏にピッタリのお汁。大鳥でかつて炭焼きをしていた人たちは、小屋にある味噌に、山中にあるミズを皮剝きだけして冷や汁に入れて食べていたそうですよ。その他、冷や汁の具材は生のキュウリやナスの輪切りが定番ですが、あき子さんの家ではわかめとサバ缶を入れて食べるそうです。
おまけレシピ あっさりミズ漬け
軽く沸騰した水に一掴みの塩とミズを(300g)を入れ、さっと茹でる。ミズがキレイな青色になったらザルに上げ、冷水にさらして上げる。ボウルに水を入れ、塩30gとミズを入れる。生姜やミョウガなどをお好みで入れ、2時間くらい漬けるとできあがり。塩加減はお好みで。
山のめぐみ図鑑
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