イタドリ|虎杖 ドンゴイ
イタドリ(虎杖)は、江戸時代中期の和訓栞という書物では、傷薬になる”痛みとり”が語源とされ、民間療法でも傷薬にされていた。イタドリの若葉を手で揉んで傷口に当てると血が止まり、痛みが取れるとか。大鳥を含め、山形県ではドンゴイと呼ばれる。宮城県ではスカンポと呼ばれる。タデ科の多年草。
イタドリについて江戸時代後期に米沢藩が飢饉対策で作成した”かてもの”という本の復刻版 読下し本には、「茎の太く、葉の大なるをどうぐひという。よくゆびき麦か米かに炊合てかて物とす。但し、妊婦は食べるべからず。」とあるが、大鳥で”妊婦はイタドリを食べない”という話は聞いたことが無い。
イタドリの新芽。下処理しないで食べるのは新芽くらいのもの。ぬるめきがあって天ぷらにすると美味しい。
5月中旬頃のイタドリ。50cm程度に伸びたイタドリを、ポコポコと根の近くから折り、葉の部分はこいてその場に捨てる。道端に大量に生えているので、てんごがいっぱいになったら軽トラの荷台に積んだコンテナに詰め変えて、再び採取する。
ツキノワグマは生で食べるそうですが、酸味が強いので人がそのまま食べるには向かない。が、茎には水分が多く含まれているので、大鳥の人(70代、80代の人ら)が子供の頃は喉が乾いたらイタドリの茎をチューチュー吸っていたそうです。
採集が終われば皮むき。一本一本、皮を剥いていく。その後塩漬け。樽にイタドリ、塩を入れて重石をして倉庫に保管。ちょくちょく様子を見ながら、樽に青い汁が出てきたらイタドリが隠れるほどに米ぬかを入れ、重石を載せて保管。米ぬかをいれるとイタドリが柔らかくなりすぎず、コリコリした触感になる。お盆の頃には酸味も抜けて美味しく食べられるようになる。
水で戻した(塩出しした)イタドリは油炒めで食べるのが大鳥では定番。「おらほ(大鳥)のドンゴイは、下のほう(街場・平場)のドンゴイよりやっこい(柔らかい)。下の方のドンゴイは繊維が多くてかてぇ(硬い)なや。」と言われるだけあって、確かに大鳥のイタドリは食感が柔らかくて食べやすい。メンマのような食感と味わい。パスタの具材も良いし、白和えなんかも合う。
道路に覆いかぶさるように沿道に生える初夏のイタドリ。この頃になるとボーボーと伸び、竹のように硬くなって食べられない。茎にナイフを入れて伐ると、中から白い虫が…。これは大鳥では”ドンゴイ虫”といって、渓流釣りなどで岩魚などの魚を釣る餌にしたそうです。
ちなみに、同じイタドリでも茎が赤いものは大鳥では「スカンポ」と呼ばれます。食べられないことはないですが、積極的には採取しない。しかし、高知県ではこの赤いイタドリも利用するそうです。皮を剥いて食べやすいサイズに切り、それを塩揉みしたら下処理完了。また、アイヌでは緑色の茎のイタドリは塩漬けにして保存。赤い茎は囲炉裏で茎を葉にくるんで灰の中で焼いて、食べるものだったそう。
■参考文献
『野草の名前秋・冬―和名の由来と見分け方 (山渓名前図鑑)』高橋勝雄
『採集―ブナ林の恵み (ものと人間の文化史)』 赤羽正春
『かてもの<復刻版 読下し本>』米沢藩
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